イームズがデザインのシェルチェア。ジェネリック家具も多数出回るほどに「シェルチェア」が愛され続ける理由とは
イームズが手がけたシェルチェア
イームズって椅子の名前なんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
椅子で有名なイームズ。イームズとは20世紀のデザインに大きな影響力を与えたチャールズ&レイ・イームズ夫妻のことです。家具だけにとどまらず、おもちゃ、建築物、映画などその活動範囲は多岐に渡ります。そんなイームズ夫妻の手がけたデザイン史に残る名作シェルチェアの魅力について紹介していきたいと思います。
まずはイームズ夫妻とシェルチェアの歴史についてご紹介します。イームズ夫妻は1941年に結婚し、1947年、シェルチェアのオリジナルデザインを現在も販売しているハーマンミラー社のデザインコンサルタントとして働くことになりました。
シェルチェアが誕生したのは1948年。イームズ夫妻はローコスト家具デザイン国際コンペティションに作品を出品しました。結果は第二位でしたが、このコンペティションに出品した作品がシェルチェアの原型となったデザインの椅子でした。そして1950年にハーマンミラー社よりシェルチェアが製品化されました。
この頃、次々と新しい技術や素材が誕生しました。その技術や素材はインテリア作りにも取り入れられました。イームズ夫妻もこれらを取り入れ、当初計画していた金属製の椅子ではなく、FRPというガラスファイバーが入ったプラスティック素材を使用してシェルチェアを製作しました。
FRPは工場などで使用されるヘルメットなどに使用されています。軽くて強度も高く、しかも安いというメリットを持っています。この素材を使用したことで、大量生産を可能にし、シェルチェアが多くの人々に使われるようになりました。
当時、FRPを使用した椅子は他になく、シェルチェアは世界初の製品になりました。その後、FRPが環境に優しいものではないと分かった後は、ポリプロピレンというリサイクルがしやすく、環境に優しい素材を使用するようになりました。
見た目は色合いが優しくなり、ツヤのないマットな質感に変わりました。そして以前より柔軟性が上がりました。環境に優しく変化をしましたが、そのデザインの美しさは損なわれることなく、ずっとシェルチェアは愛され続けいています。
イームズ夫妻は、プラスティック素材以外にも木製のシェルチェアを作りたいと考えていましたが、当時の技術では実現することが出来ませんでした。木の3D成型技術が可能になった昨今、ようやく木製のシェルチェアがハーマンミラー社より製品化されました。
イームズ夫妻は「最高のものを、最大多数の人に、最も安い価格で」という願いをシェルチェアで叶えました。そしてイームズ夫妻は「ニーズを認識することが、デザインの前提条件である」とも掲げており、それもまたシェルチェアは見事に実現しました。
高いデザイン性で世界中を虜に
シェルチェアを一度は目にした事があると言う方も多いのではないでしょうか?シェルチェアは高いデザイン性を兼ね備えながら比較的安価で量産できる事を目的に作られました。デザイン性が非常に高いので当時から若いファミリー層より絶大な指示を集め、その人気はアメリカにとどまらず世界中で人気となりました。日本でも雑誌などで度々紹介され、オシャレなカフェやデザイナーズオフィスなどで利用されているのです。
もちろん自宅用のインテリアとしても支持が高く、イームズのシェルチェアがあるだけでとても素敵な空間を作り出す事ができます。シェルチェアはデザイン性が高いにも関わらず、コンパクトであるという魅力もあります。そのサイズ感が自宅用としても支持される理由の一つなのかもしれません。
ほかにも手入れがしやすいことがシェルチェアの魅力です。この魅力がファミリー層からも支持された一つの理由と言えそうですね。汚れてもさっと拭くことが出来る手入れのしやすさが、どの時代でも愛される要因ではないでしょうか。
シェルチェアは、様々なインテリアとの相性の良さも魅力です。アールデコ調の空間にも、日本の古き良き文化を生かした和の空間にも、バリにいるようなリラックスできるアジアンテイストな空間にも、いま日本でも流行っている北欧スタイルにも馴染みます。シェルチェアは馴染むだけではなく、空間の完成度をアップさせることも出来ます。
シェルチェアは背もたれと座面が一つになったシェル部分に注目されがちですが、脚の部分も高いデザイン性が施されています。シェルチェアの脚の部分のデザインは、細く複雑に交差したものがあります。見た目がエッフェル塔に似ていることから、エッフェルベースとも言われています。その繊細なデザインがシェルチェアの魅力を底上げしています。
脚の部分のデザインは一つではなく、スタッキングしやすいものや、4つ脚のシンプルなものもあります。好みや用途に合わせてデザインを選択できることもシェルチェアの良さと言えるでしょう。
シェルチェアに座るともっと好きになる
シェルチェアは高いデザイン性だけでなく、座り心地の良さも魅力の一つです。
プラスティックや木でできた深く座るくぼみ部分の座面と滑らかな曲線で素晴らしいフィット感を実現。あらゆる人にフィットするその座り心地と、可愛らしいポップなフォルムはどんな空間でも馴染むことのでき、デザイン性、機能性、多様性の三拍子を兼ね備えた椅子と言えるでしょう。
もう少し座面に柔らかさが欲しいという方は、チェアパッドやクッションを使うことをおすすめします。他の椅子にも言えることですが、長時間座っていると腰に負担がかかり、痛くなる場合があります。特にシェルチェアはプラスティックや木の素材で出来た座面なので、長時間座るのは不安だという方にもチェアパッドやクッションの使用はおすすめです。
自分好みのデザインや座り心地の良いチェアパッドやクッションをシェルチェアに置くと、より愛着が出て、一層座りたくなる椅子になりそうですね。
流行に左右されず愛され続けるシェルチェア
60年以上も前に作られたものとは思えないほどのデザインと機能を兼ね備えたシェルチェアは今もなお世界中で愛され続けています。無駄をなくした非常に洗練されたデザイン、そしてモダンさを感じるイームズの作り出した椅子は、椅子という実用的な家具というくくりにとどまらない存在と言えるのではないでしょうか?
現在は、リプロダクト品が多く販売されています。リプロダクト品とは、意匠権というデザインの権利が切れたものを再現した製品のことです。オリジナルのデザインに限りなく近い製品であり、レプリカやジェネリック製品とも呼ばれています。さまざまなメーカーやショップから販売されており、素材や価格も様々です。中には手ごろな価格で販売されているものもあります。
シルエットデザインは忠実に再現しながらも、シェル部分はプラスティック素材以外の物を使用しているものもあります。ファブリック素材やレザー素材を使用し、クッション性を持たせているシェルチェア、パッチワーク生地を使用したよりポップなデザインのシェルチェアなどです。オリジナルのシェルチェアは言わずもがな素晴らしいです。ただ、侮れないのがリプロダクト品です。自分の好みに合った素材や価格にあったものを選ぶことが出来るのがリプロダクト品の魅力と言えます。みなさんも自分の好みに合ったシェルチェアを探してみてはいかがですか。